2013年7月20日土曜日

チューター制度

皆様こんにちは。今日は真面目な話です。弁護士の渡部源です。


来月,他会の弁護士の先生方が,横浜弁護士会の「チューター制度」等の現状を聞きに来て下さるとのことで,若手会員支援制度に関する意見交換会が開催されることとなり,現職チューターとして私も参加することとなりました。

その場で思いついたことを話すつもりではあるのですが,実は尋問でも討論でも,予め頭の中で構成を練ってから臨むタイプの人間なので,せっかくですから,文字に起こして自分の考えを整理しておこうと思います。


チューター制度の概要は,2013年7月12日投稿でも触れたとおりですが,次のようなものです。

現在,弁護士業界は,修習(研修みたいなもの)期間の短縮化,法曹人口の激増に伴い,新規登録弁護士のスキル維持・向上が課題として挙げられており,また,法曹人口の激増により,新規登録弁護士が人的繋がりを築きにくい状況にあります。法的スキルは,単に教科書を読むだけでは身に付かず,多種多様な事件に触れることにより研鑽されるものであり,新規登録弁護士の「孤立化」は避けることは絶対的な命題なのです。

そこで,このような新規登録弁護士をサポートするべく,登録して間もない弁護士を会内の先輩弁護士がサポートする体制をとり,弁護士会としての質を向上するため,このチューター制度を作り出したのです。


本制度は,横浜弁護士会において,2011年1月より施行されておりますが,施行前の段階で,私は委員会のある先生に対し,本制度に対して明確に反対意見を述べていました。

理由は,「弁護士は職人である。人から教えてもらうのではなく,人の技術を盗んで成長するものである。」というものです。

「いや,でももう決まるから。」と言われ,「マジかー!会費の無駄遣いにならなきゃいいけど。」と言っていたところ,その1年後,別の先生経由でチューターの打診が来て,まさか自分がチューター講師料(ほぼ無償みたいなものですよ。)を弁護士会からもらることになるとは思いませんでした。

以下,現職チューターの持論です。


チューター制度の目標は2つ挙げられています。
①新規登録弁護士のスキル維持・向上
②新規登録弁護士の孤立化を避けること
この2点です。

チューター制度においては,必ず勉強会を開き,その後懇親会をやって親睦を深めます。

これを一年に5〜6回は行うように指示が出ています。

ただ,現職(去年もやった)の意見を言わせて頂ければ,これだけでは上記①及び②は到底達成不可能です。

弁護士業務は,勉強会を5,6回やっただけでスキルが上がるような簡単なものではありません。

また,5,6回懇親会をやっただけでそんな仲良くなるわけがありません。世間ではそれを「飲み友達」と言うのです。

ただ,私は,上記①及び②を達成するように勉強会と懇親会を開くよう指示した若手支援育成委員会を非難している訳では全くなく,むしろ,それだけでは足りない,ということを言いたいのです。

私は,弁護士というものは,登録したその初日の時点で,一人前の職人であるべきだし,そうでなければならないと思っています。

もちろん,経験が浅いため,分からない部分,処理に迷う部分というものはどうしても出てきますが,じゃあ誰かが親切に教えてくれるかと言ったら大間違いです。弁護士は有資格者(プロ)です。イソ弁だろうが企業内弁護士だろうが,有資格者(プロ)としての自負がない弁護士に仕事は来ません。

プロは仕事を教えてもらえません。なぜなら教えてもらうレベルにある相手もまたプロであり,それは商売敵であるからです。一時教えてもらえることがあったとしても,そんな時期はすぐに去ります。

従って,私は勉強会において,「教える」ということは一切していないつもりです。むしろ,「人の仕事の仕方を見て良いところを盗む方法」を教えているつもりです。

例えば,大学のような講義形式の授業をしては絶対にいけないと思っています。彼らはもうプロです。むしろ我々チューターと切磋琢磨するんだぐらいの気持ちを持って欲しいです。

とはいえ,どんな弁護士でも,自分が扱う案件は,少なくとも年に100件は超えるでしょう。年に5,6回の勉強会では絶対的に足りないのです。

他方,それ以上勉強会の数を増やすと,新規登録弁護士の本業に支障をきたすおそれがあります。これ以上は増やせないと思います。


話を戻すと,上記①は,チューターの1年間では絶対的に達成が不可能な目標だと思っています。

他方,上記②(孤立化を避ける)は可能だと思っています。

私は施行2年目という制度誕生の過渡期からチューターをやっていますが,2年目という「前例が固まっていない」時期にチューターになれたのは幸運でした。

前例がないので,私の好きなように制度を運用できました。

私がまず第一に考えたのは,自分の受持班を「家族」にすることでした。


私は独立前,家族のように接してくれる事務所で育ったのですが,ボスも,兄弁も,事務局も,みんな仕事のやり方を「盗ませて」くれました。

悩みも共有できたし,独立した今でも,あの事務所に籍を置けたことは幸せだったと思います。

目指すイメージは明確でした。ベテラン枠の先生は何でも知ってる厳格な「お父さん役」,中堅枠の先生は温和で相談しやすい「お姉さん役」,若手枠の私は「騒がしい長兄役」。

勉強会は,絶対にお通夜みたいな暗い雰囲気にしないようにしました。どんな高度な問題を出されても,誰かをいじって騒ぎました。正直,問題の答えよりもそこで一緒に騒いだことを覚えておいて欲しいです。

懇親会は,絶対に上の期の先生をいじりました。「下が上をいじる」というのは,一歩間違えれば礼を失することになるので,非常に難しいのですが,上手くハマれば,その場に大きな笑いも起きるし,何より,自分達も上の期の先生に気さくに話しかけていいんだという空気が生まれます。

礼儀を逸しない,ギリギリのラインを模索するのが難しかったのですが,昨年も本年も,ベテラン枠と中堅枠の先生が,私の「意図」をなんとなく察してくれているので非常にありがたいです。

また,必ず全員と話すようにしています。懇親会は特に何か悩みを抱えているときに話しやすい場なので,わずかな時間でも接することができるように心がけています。具体的には,酔っぱらったフリをして,席を頻繁に移動しています。

メーリングリストにおいても,何か質問がきたらすぐに返信するようにしています。私自身の愚痴も流すようにしています。


そうです。

擬似的でもいいから,半分騙されていると知っていてもいいから,一度「家族」になって,新規登録弁護士が,自分の事務所「以外の居場所」を作ってあげることが,チューター制度の最も肝心な部分だと思っています。

1年間でスキルの維持・向上はできませんが,1年間で「仲間」になることはできます。その仲間と作った「場所」は,今後自身が研鑽を積むためにきっと役立つと信じています。


今後本制度を採用する単位会は,チューターという制度は1年間で終わっても,チューターが離れた後,自分達が自立して研鑽できる場が生まれている,そんな中・長期的な試みにして欲しいと思います。



真面目な話を書きましたので,いつもの文章と異なり,フォントをいじくって遊んでおりませんが,私だってたまには真面目なことを書くのです。

今日は休日出勤にも関わらず来客キャンセルくらったから腹いせにたまっている書き物関係を全部済ませてるんです。









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