2014年1月24日金曜日

というわけで弁護士になりました。

紹興酒のグラスは一気飲み専用に見える。弁護士の渡部です。

昨日は,2013年度横浜弁護士会チューターの全体打ち上げ会が。横浜中華街で盛大に行われました。

明文の規定は無いのですが,このチューターは単年更新で最長2年が任期と言われておりまして,もちろん事前にその旨の説明を受けた私は,2012年度に続き,2013年度もチューターをやらせて頂き,これにてお役御免となり,後は後進の成長をのんびり眺めるだけになりました。

と思ったら,「2014年度もやれ」というよく分からない日本語で書かれた選任通知が来たので,昨日の打ち上げ会で副委員長(大御所)にマジで結構本気で直訴するという強攻策に出たけど却下されました。

こうなったら仕方が無い,逆に選任通知を向こうから取下げさせる方向に持って行くしかないと判断した私は,他の人が壇上で真面目なスピーチをしている真後ろで,紹興酒片手に,EXILEのチューチュートレインを踊りだす(ギャラリーは100名以上)という自殺行為を敢行しました。

ところが,何が気に入ったのか,横浜弁護士会会長が壇上に上がってきておれに紹興酒を笑顔で注ぎ足していいぞ飲め飲めみたいなことやってきたもんだから,結局「なんか変わった人がいる」ていう感じで終わりました。




というわけで2014年もチューターです。

ところでこのチューター制度,私だけではないと思うんですけど,チューターやっている方からすると,「ほんとにこの方向でやっていて大丈夫かしら」と思うことがしばしばあります。

と言いますのは,この業界(法曹業界),ものすごい縦社会制なところがありまして,「上は下の面倒を見るものだ」「上から受けた恩は上に返さなくていい,下に返せ」という慣習が根強くあり,私も新人時代はすごい面倒みてもらいました(但しおれ自身は今も新人だと思っているから誰か奢って下さい。)。

ところが,私がチューターをやるようになったからでしょうか,キツイ言い方をすれば,「なんか物足りない」と思う子が増えてきている気がします(全員じゃないよ。)

すごい頑張っているのは分かるんです。修習が貸与制に変わり,弁護士増員に伴う業界不況等の不安の中,一生懸命仕事をして営業活動を行っている,そういう新人の皆さんがいっぱいいます。

「最近の新人は貸与制に変わり,逆に激しい危機感の中仕事をしており,むしろ意識レベルは高い」と評価している先生方は多くいます。むしろそっちの方が多数派なのかしら。

でも,うーん,なんか違う,と思うことがよくあります。



これからとある「怪物」の話をします。

司法試験に合格すると,1年間,「修習」と言って,裁判所や検察庁,弁護士事務所に研修に行きます。

私の場合,静岡のとある事務所でお世話になりました。

「怪物」とは,そのときの指導担当弁護士のことです。

なぜ「怪物」と表現しているかというと,私は人生であのお方程「豪快」な人間を見たことがないからです。

例を挙げればキリが無いのですが,

  • 「働かざる者食うべからず。修習生だろうが容赦はしない,『勉強』ではなく『仕事』をしてもらう。」(普通は修習生に弁護士と同レベルの起案を求めない。)
  • 「なんのためにお前の机に電話があると思っているんだ。書証が欲しければ自分でお客さんに電話をするんだな。」(普通は修習生に自分のお客さんを接触させない。)
  • 「今日のお前は良い『仕事』をした。だからこの皿の肉を全て食べる義務がある。」(この後食い過ぎて吐いた。)
  • 「殴られたらチャンスだと思え。被害届の書き方は簡単だ。」(生々し過ぎる経験談)

という数々の名言を残された現役バリバリの弁護士です。今確認したらもうすぐ弁護士キャリア30年ぐらいの方だと思います。

名言も去ることながら,

  • 事務所のボスなのに朝6時に出勤している。
  • 「ちょっと付き合え」と言い,午前様になるものの,「お前,明日は昼から来ればいいから。」と優しいお言葉。
  • それでも一応午前9時に出勤したら,朝8時の時点で既にボスは働いていた。
  • 裁判所に行くなど,町に出ると知らない人から必ず挨拶をされる。
  • 「ちょっとエビが食べたい」と言い出し,港に車を走らせ漁師と交渉。

という行動力のある方でした。

で,私,この方のことを非常に尊敬しておりまして,今でもお中元お歳暮欠かさず送っているんですけど,私がこの方から一番感銘を受けたのは,「人間関係は損得勘定を抜きにして考えろ。」ということです。

この方も,他士業の先生方と交流を持たれたり,地域活動をするうんたらかんたらとか活動されていて,私自身,実際そのパイプから事件を受任している姿を見ているので,「結局得になる人脈構築を狙ってんじゃねーか。」と,本心では思っていました。


ある日,「付き合え」と言われたので,いつも通りご飯を食べて,その後どこに行くのかな(事務所に戻って一緒に仕事をするパターンもあった。)と思っていたら,その日はすごい落ち着いたバーに連れて行ってもらいました。ジャズが流れる,年配の佇まいが美しいママさんが一人で切り盛りしているバーです。

で,その先生は,プリン体の関係からビール飲み過ぎると危ない注意報が発令されていたので,ずっとウイスキー飲まれていましたので,おれも合わせて飲んでいたら,さすが酒豪,先に私がダウンしました。

「ちょっとトイレ行ってきます。」と言って吐き,気持ちをリセットして席に戻ろうとしたら,おれの席に知らないおっさんが座ってました。

おれ「おっさん,そこはおれの席でそれはおれのウイスキーだ。(当時26歳,酒乱。)」
おっさん「あぁ,お兄さん,ごめんよ。」
指導担当「いいからお前はこっち側座れ。」
おっさん「いや,いいよ,お兄さんの言うことは正しいから,私がそっちに行くよ。」

私は指導担当と2人で話すのが好きだったので,正直なんだこのおっさんと思いましたが,「ひょっとしたら先生のお客様かも…!」と焦りました。

しばらく2人で話されていたのですが,どうやらこのおっさん,地元で有名な(おれも聞いたことある)会社の社長さんだったようで,仕事がどーたらこーたらとか話してました。

しばらくしたら,4人組ぐらいのお客さんが来て,指導担当に「あ!◯◯先生」と声をかけられていました。

で,その4人組が「あ!△△さん!今日は◯◯先生と一緒なの?」と気がついたようです。

なるほど,指導担当とおっさんはあまり見ないセットだったんだな,と思いながらママの年齢当てクイズを一人でやってたんですけど,おっさんが,「ちょっとあっちに顔出してきますね。」と言って,4人組のテーブルに移って行きました。

おれ「すいません,なんかさっき先生のお客様に失礼な口を聞いてしまって。」
指導担当「あぁ,気にするな,いいよ。」
おれ「でも,地元で仕事していると,お客様とばったりプライベートで会うこともあるんですね。」
指導担当「そうだな。多いな。」
おれ「あのおっさんはどういう繋がりなんです?」
指導担当「ない。」
おれ「は?」
指導担当「繋がりなんて無いよ。」
おれ「は?おれがトイレ行っている間になんか2人で話していたじゃないですか。」
指導担当「なんとなく,この人面白そうだなと思って声かけた。初対面だ。
おれ「あんたバカか(原文ママ)」
指導担当「でも,お前が席を譲れみたいなことを言ったとき,あの人笑って譲ったろ?酔っていたこともあるかもしれないけど,そういう人なんだろうなと思ったんだよ。面白いだろ?おれの目は間違っていなかっただろ?」
おれ「変な人でめんどくさかったらどうするんすか。」
指導担当「それはそのとき考えればいいんだよ。」
おれ「いつもこういう風に声かけてるんですか?」
指導担当「そんなことないよ。気が向いたとき。」
おれ「仕事に繋がるかもしれないから?」
指導担当「(笑って)それもあるな。だけど,まぁ,おれの趣味みたいなもんだ。」

で,聞いてみました。

おれ「正直,先生の事務所,儲かってるじゃないすか。」
指導担当「他は知らんが,まぁそうかな。」
おれ「他の先生方もそうだけど,先生自身がすげー働いてるじゃないですか。」
指導担当「働いているから稼いでんだよ,おれは。会務をやる奴らに申し訳ないけどな。」
おれ「先生,もうすぐ還暦じゃないですか。」
指導担当「知らねーよ(笑)そうだっけ。」
おれ「正直,『もういいや』って気持ちにならないんすか?金はもうあるじゃないですか。」

指導担当が,笑顔から真顔になりました。(恥ずかしいけど以下原文ほぼママ)

指導担当「お前は今,いくつになった?」
おれ「26です。」
指導担当「おれが司法試験受かるのに時間がかかった話はしたか?」
おれ「聞きました。」
指導担当「10年かかったよ。貧乏だったし,本当に辛かった。」
おれ「…。」
指導担当「今の事務所もな,最初はおれ一人で,4畳半のスペースでやってたんだぞ。」
おれ「でもでかい事務所になったじゃないですか。修習生用の電話がある事務所なんて聞きませんよ。」
指導担当「お前,前に,会務あまりやらないことに対して,おれに意見言ってたよな。」
おれ「はい。」
指導担当「おれは金が無いときの辛さを知っているからな。だけど仕事をしているのは金が理由じゃないぞ。」
おれ「じゃあなんなんすか。」
指導担当「楽しいからだ。おれは10年かかって弁護士になった。『働き盛り』と言われている年代を受験勉強で潰したのは本当に悔しかった。だから,弁護士になったとき,本当に楽しいことだけしようと決めた。おれは無理をして仕事をしているのではなくて,楽しいから仕事をしているんだ。」
おれ「よくわかんねっす。」
指導担当「いいか,お前は弁護士になったら,商工会議所とかに必ず入れ。」
おれ「おれ検察官になるから関係ないっす。」
指導担当「いいから聞け。さっきの△△さんもそうだ。お前のことを褒めていた。この間の社長さんも,お前のことを弁護士だって認識してないからか,『お宅に活きが良い若いのが入りましたね。』と評価していた。入ってないけどな。でもな,お前はよく分かんないけど人を惹き付けるなにかがあるんだわ。お前が検察官になろうが興味は無いが,お前は営業に向いている。」
おれ「おれ人見知りだって知ってるじゃないですか。無理すよ。」
指導担当「この仕事してると,感じるんだよ,あぁ,この人は『ある』なっていうのが。お前はなんか違うものが見えてんだよたぶん。損得勘定抜きにもの言うだろ,お前。」
おれ「ムカついたらソッコーキレます。」
指導担当「いいか,おれが会合とか出て仕事を引っ張って来るのは,おれが金のために会合に出ているわけじゃないからだ。憧れた弁護士として活動するのが楽しいからやってんだ。もちろん,会合には仕事狙いで来るやつが大半だ。だが,不思議とおれの方に来る。分かるか?」
おれ「分からん。」
指導担当「最後は『人柄』なんだよ。『人柄』で頼みたくなるんだよ。弁護士としての営業活動はきちんとしろ。でも,お前は変わんなくていいよ。」
おれ「変わらん。だから検察官になる。」
指導担当「検察官なんてやめちまえ(笑)弁護士の方が楽しいぞ。」
おれ「うるせーよ。」


なんか泣きそうになってきた。










にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村