2014年5月18日日曜日

【短期集中連載】集団的自衛権の議論を知ったかぶりする方法①

「最近,貴様のブログは小難しい」と言われた渡部です。


そんなつもりはないんですけど,よく見てみたら,最近,ぼくんところの内閣の悪口ばっかり書いている自分に気がつきました。

「人様の悪口は言うもんじゃないの!」とよく母親に叱られていたのを思い出しました。

これはいけない。この傾向はいけない。何も考えずにブログを更新するのはよくない。

そう思い,今日も何も考えずに筆をとっています。



話は変わるんですけど,この間,NHKで集団的自衛権を取り上げた番組がやっていました。

視聴者からの声も応募していて,それなりに面白かったんですけど,中にこんな投書がありました。

20代男性「どっちの立場も言っていることに決めてを欠いていて,どちらに賛成したらいいのかよくわからない。」(要約)

このとき私に衝撃走る。

私「これだ!」

このブログのアクセス数を更に増やしたいという隠れた野望を持っているこの私。

このブログの存在を知っているのに執筆依頼をしてこない◯波書店に恨みを持っているこの私。

何かの需要を見つけた気がしました。

最近何かと話題の「集団的自衛権」。

でも,何か小難しくて,いったいどういう議論なのか分からなくて困ることありませんか?

井戸端会議をしていたら,「◯◯さん,あのスーパー明日特売らしいわよ?ところで集団的自衛権についてどうお考えですか?」と聞かれることありませんか?

仕事をしていたら,部下から「部長,決済をお願いします。あと,集団的自衛権もお願いします。」と頼まれることありませんか?

勇気を出して先輩に告白をしたら,「おれ,集団的に自衛できない人とは付き合えないから…。」という甘酸っぱい想いをしたことはありませんか?

待望の第一子が発した言葉が「しゅうだんてきじえーけん」だったので非常に困ったことはありませんか?

「しゅう」まで入力したら,予測変換の第一候補が「集団的自衛権」で困ることはありませんか?(私)


このブログの読者の皆さんは,このような経験が全員「ある」ものだという前提で進めます。


これより,議論することが仕事の弁護士が,口喧嘩することが仕事の弁護士が,ていうか口喧嘩で負けたためしがない私が,「集団的自衛権の中身まで深く踏み込まないんだけどなんとなく知っているような雰囲気を醸し出す方法」を教えます。

というか,集団的自衛権の議論を整理します。

あくまで「知っているような雰囲気」なので,最低限のレベルにとどめます。

これで興味を持って,自分でちょっと調べてみようかなと思って頂ければ幸いです。




議論の順番

議論の順番としては,
①集団的自衛権の必要性
②集団的自衛権が必要だとして,どのように認めるか
という流れで考えて下さい。

よく,ニュース等で「閣議決定では無理」とか「憲法改正が必要」とか「集団的自衛権は限定的にすれば現行法で行使可能」とか報道されておりますが,全て②の話です。

これはどんな議論でもそうですが,何かをしようとしたときに,
①必要性があるか
②必要性があるとすればどうしたらいいか
という筋で議論するのが効率的です。

何故ならば,①で「必要性がない」という結論になれば,②の話をする必要がないからです。

報道に接するときは,「今は①の話をしているのか,②の話をしているのか」を意識していると良いと思います。




集団的自衛権の必要性(①の話)

集団的自衛権が何故必要なのか?
これについては,「必要だ」と言っている人に説明してもらうというのが筋です。

何故なら,集団的自衛権という概念を認めなくても,今まで日本は普通に存続してきたからです。

何かを変えるときは,変えようとする側が「必要性」を説明することで初めて議論が開始されるわけであって,決して変えなくてもいい側が「不必要だ」ということを説明する必要はありません。

この「必要性」も具体的なものでなくてはいけません。「なんとなく必要だと思うからお前の方でいらないという理由を説明しろ」という相手の論法に乗っかると,間違いなく負けます。

よく,法律の世界で,「ないことの証明は『悪魔の立証』」と言われますが,「いらないこと」を説明するのって,ものすごいナンセンスなんです(法律の世界に似たような概念として,「立証責任」というものがあります。)。

「日本が危ないじゃないか!お前はなにを考えているんだ!」という主張に対して真っ向から立ち向かう必要はありません。「何故危ないのか説明しろ。それも具体的にだ。議論はそれからだ。」というのが紳士淑女のたしなみです。

集団的自衛権が必要か,不必要か,あなたがどちらの立場に立たれているのかは分かりませんが,上記のような質問には,必ず上記のような返事をしてみて下さい。これにより,「相手が議論する余地のある人間か否か」が分かります(法律の世界でも同様)。

で,今,「必要だ」と言っているのは総理なんですけど,総理の私的諮問機関(安保懇)が報告書で「必要性」を挙げました。


安保懇の報告書

とりあえず今は読まなくていいです。

リンクは貼っておきます。

なぜ読まなくていいかというと,内容が難しくてうんざりするからです。知ったかぶりですまそうとしているのにこの分量はあり得ません。

あと,今読まなくていい理由はもう一つありまして,この安保懇の報告書,上記の①必要性の話と②必要だとしてどうするべきかの話を意図的に混同させることにより,「これは認めるべきでは」という方向に誘導する「文章構成」になっています。

具体的に申し上げますと,目次を見て頂ければ分かるのですが,「②の話をした後にその気にさせて①の話をし,最後に再び②の話に持っていって落ち着かせる」という分かりにくい構成になっています。たぶん,意図的に。

議論をする上で(知ったかぶりをする上で),最も大事なのは,「自分の頭で考えた(っぽい)」ということです。意図的な誘導に乗ること無く,まずは自分の頭で考えるべきです。自分の頭で考えた結果,どちらの結論になるかは自由なのです。

ただ,安保懇の報告書には,①の必要性の部分に関して,6つの事例を挙げています。

他にも書いてあるんだけど,今は知ったかぶりをするだけなのでこの4つさえ押さえておけばだいたい議論には応戦できるので問題ないです。


以下,6つ中4つの事例を挙げますが,その事例を見てあなたがどう思うかは自由です。

ただ,大前提として,現在日本には個別的自衛権(日本が攻撃を受けた際反撃する権利)が認められているということは頭に置いて下さい。

その上で,4つの事例を見て,まず自分の素直な感想を持つことが大事です。

感想例も挙げておきますが,あくまで例なので,他の感想を持っても不思議ではありません。

知ったかぶりをするためには,やはり自分の感覚に近い意見というものを選択した方がいいと思いますので,変に周りがそう言っているから,特にブログ主がそう言っているからといって流される(反発する)と,自己矛盾に陥ります。自分に嘘ついて生きることほど辛いことはないので,気をつけて下さい。

また,このブログの趣旨から,「どちらが正しいか」は書きません。是非感覚を大事にして下さい。
但し,議論をする上で,相手の感覚を知ることも大事ですので,自分の感覚に合わないものを全否定することは避けた方がいいと思います。そういう人は友達ができません。


事例1 我が国の近隣で有事が発生した際の船舶の検査、米艦等への攻撃排除等

安保懇:日本の近くでアメリカがおっぱじめた際,アメリカの敵国船が日本の近くを行き来しているのが危なくて仕方ないからその船に対応できるようにすべき。

なるほど。日本は攻撃受けてないけど,その船とかスルーしてたら怖くて仕方ないということですね。

Aさん:おれは安保懇の考え方と一緒だ。

知ったかぶる上で,この解答は0点です。モテません。
なぜなら自分の頭で考えていないことが丸出しだからです。もう少しなんとかしないとモテません。

Bさん:日本領域内でこのような事態が生じた場合には,近い将来日本に対する攻撃が予測できる場合もある。それに対しては,日本に対する攻撃がない場合に船舶を検査するとそこで武力衝突が生じるおそれがあり,個別的自衛権以外の対抗策をとる必要がある。

これはモテます。一瞬で彼女はメロメロです。

Cさん:日本の領海内に武器を持って侵入してるのであるならば,それは日本領海内に敵意をもって侵入したものとして,個別的自衛権でクリアできる。

これもモテます。

ブログ主:ていうかこれどことどこの国を想定してんの?

あまりモテてません。



事例2 米国が武力攻撃を受けた場合の対米支援


安保懇:同盟国アメリカにミサイル撃ってきた場合,アメリカの要請で,アメリカに着く前にミサイル迎撃しなければならない。

同盟国アメリカを日本と同視して,必要性を述べています。

Aさん:アメリカを助けなければ,日本の経済も大混乱になる。

Aさんが改心して自分の頭で考えるようになりました!
たぶんモテたかったんだと思います。

Bさん:アメリカへの攻撃はミサイルに限らない。やはり事例1と同じように,日本の領海を通過してアメリカへ進撃する場合に食い止める方法を模索すべきではないか。

Bさんはさっきからモテまくりです。

Cさん:例えば朝鮮半島から発射されたミサイルは,日本上空は通過せず,北極圏を通ってアメリカに向かうのであり,日本に直接の危機はない。また,そのようなミサイル迎撃システムは現在の技術では不可能である。

実はこれはよく言われていることです。政府もこの技術がないことは暗に認めています。

ブログ主:ていうかそんな技術があったら,アメリカよりも先にまず日本を潰しにかかるんじゃないの?

よく非国民と言われます。



事例3 我が国の船舶の航行に重大な影響を及ぼす海域(海峡等)における機雷の除去

安保懇:日本の航行に機雷(海中にある船に対する地雷みたいなもの)を除去しなければ日本経済にダメージが出る。これは日本に対する攻撃が無いので個別的自衛権では無理。

機雷って初めて知った。

Aさん:機雷なんて嫌い。

Aさんの脳みそが停止してきました。

Bさん:機雷設置箇所は紛争地帯が多く,機雷を除去するのには武力衝突が現実的に考えられる。

Bさんはいったいどれだけモテるんでしょうか。

Cさん:機雷探知能力があれば,それを避ける能力はないのか?またPKOの後方支援という形で除去できないのか?

さすがCさん,柔軟な発想。

ブログ主:こういうケースって,過去にあったの?


事例4 イラクのクウェート侵攻のような国際秩序の維持に重大な影響を及ぼす武力 攻撃が発生した際の国連の決定に基づく活動への参加

安保懇:国連加盟国である以上,世界平和に日本も血を流して寄与すべき。

そういう考え方は確かにある。

Aさん:省略

Aさんの意見を考えるのがめんどくさくなってきました。

Bさん:イラクの大量破壊兵器の件もある。「国際秩序の維持」という甘美な言葉に酔うことなく,他国間の紛争介入は慎重であるべき。

おーっと!Bさんまさかの安保懇に反対意見!!

でもこういうことが,まさに「自分の頭で考える」ということです。さすがBさん。付き合った女性の数は軽く3桁行っていると思います。

Cさん:日本は国連軍に寄与すべき。自分だけ血を流さないのはずるい。

Cさんも自分の意思を強く持っていたの巻。

ブログ主:イラクであれだけ揉めたのに(以下略




次は②の話に入ります。

【次回】→できた。



(今日の一言)

議論を整理するつもりが,できていない。


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