2014年8月3日日曜日

高校生模擬裁判選手権

高校生模擬裁判選手権が終わりました。渡部です。


高校生模擬裁判選手権をご存じない方はこちらをご覧下さい。
【日本弁護士連合会|第8回「高校生模擬裁判選手権」を開催します!】
http://www.nichibenren.or.jp/event/year/2014/140802_2.html


神奈川からは湘南白百合学園高等学校が出場し,見事優勝。関東大会8連覇を達成しました。


「第8回模擬裁判選手権」という名称のとおり,高校生模擬裁判選手権は今回を含めて8回開催されています。


要するに,模擬裁判選手権が開催されてから,湘南白百合は一度たりとも王者の座を渡していないことになります。


どう考えても変態的な強さです。



さて。この度ぼくがなんでこの話を始めたかというと,今回,ぼくは湘南白百合の「支援弁護士」という立場で関わらせて頂いたからです。

支援弁護士は何かって言うと,高校生が模擬裁に当たって分からないことがあったときに「支援」するというポジションです。

ポイントは「指導」ではなく「支援」というところです。

そもそもこの大会は「模擬裁判を行う経験を通じて,物事のとらえ方やそれを表現する方法を学び,刑事手続きの意味や刑事裁判の原則を理解すること」という高尚な目的があり,専門家である弁護士が専門的な口出しをすると,「生徒が自分の頭で考える」ことを阻害してしまうので,「あくまで生徒が自分の頭で考えられるように導く」役割であることが厳命されています。

要約すると,「生徒の議論があまりにも見当違いな方向に行かないように見張りつつも,具体的なアドバイスはするなというあまりに矛盾した鬼発注を日本弁護士連合会から受けた可哀想な人」が支援弁護士です(私見)。


もう終わった話だし,来年またお鉢が回って来ないように,今日は支援弁護士のウラ話でも話しとこうと思います。



第一章 〜当事者の意思を尊重しない選任手続〜

ぼくは横浜弁護士会の「法教育委員会」という委員会に所属しております。

この委員会は,子どもから大人まで,世の中に法に基づいた考え方を根付かせるという極めて教育色の強い委員会で,ぼくも中・高校生に授業をしに行ったりしています。

ここで重要なのが,委員会活動は基本的に全くお金に繋がりません。

更に重要なのが,ぼくは特に教育熱が高い人間ではありません。

当会の法教育委員会はだいたい月に1回のペースで開催されているのですが,ぼくは一年に一度出るか出ないかの出席率で,たまに出ると「なんで今日は渡部が来てるんだ」的な視線をひしひしと受けます。

要するにマイナーキャラだということです。

そんなマイナー委員のぼくでも,高校生模擬裁判選手権の存在,湘南白百合がそれで7連覇をしていること,そして8連覇に向けてプレッシャーがかかっていることは,風の噂で聞いていました。

そんなぼくのところに,不穏なオファーが届きます。

あれは一年前でした。

同期「来年,支援弁護士やらない?」
おれ「断る。」

そのときはそれで終わりました。

ところが,いよいよ今年の支援弁護士を選任しなければならない時期に近づくにつれ,「やってくれない?」「やるよね?」「ていうかやるよね?」という目に見えない圧力を感じるようになりました。

まさか人権を擁護する立場にある弁護士会内において,パワーハラスメント的な何かが存在する訳がないだろうと思ったんですけど,ぼくはNOと言える日本人なので,断固NOを押し通していました。

よく考えてみて下さい。私は高校のときに出席日数が足りなくなって3人の先生に土下座して卒業させてもらった人間です。どう考えても生徒を教えるなんてあり得ません。

ところが,ぼくがちょっと目を離した隙に,ぼくが支援弁護士をやることを前提にした人事選考が始まっていました。

おれ「絶対にやらない!」
先輩方「またまた〜。」

あの時ほど,ダチョウ倶楽部の上島竜兵さんの気持ちを理解できた時はありません。


ダメだ,この流れはもう戻せない。これで断ったらもっとめんどくさいこと回される。ここは被害を最小限に抑えるために引き受けて,今後は法教育から撤退するしかない。

これが支援弁護士を引き受けた動機です(不純)。



第二章 〜育ちの違いを感じた支援活動〜

というわけで,ぼくの他2名の計3名の支援弁護士が正式に選任され,実際に支援活動を始めることになりました。

選手の第一印象は,うーん,そうですね,すごい大人しい子達だな,という印象でした。

まぁそれが最終的にあんなに闘争心むき出しになるとは思いませんでしたけど。

支援活動といっても,ぼくたちが具体的に何かするわけではないので,簡単に刑事手続きの流れを説明して,各手続の意味,趣旨を説明して,さぁ自分達でやってご覧,という完全放任主義でやらせました。

なお,ぼくが支援弁護士に選任されるにあたり,湘南白百合には,「おれの自由にやらせて下さい。やり方に口を出したらぼくもう来ません。」というなぜか上から目線の条件を提示して承諾をもらっていました。

ちなみにこの条件の存在は,今,このブログで初めて公表しました。当然,当会法教育委員会には内緒で提示した条件です。

このブログを委員長が見ていないことを切に願うばかりです。


というわけで選手に記録を見て事案を整理させてみたんですけど,驚くほど出来が悪かったです。

これは上手く言えないんですけど,ぼくからするとここ絶対におかしいと思うポイントをおかしいと思ってないんです。

ぼくからすると「なんで疑問に感じないのか疑問である」という哲学的な悩みに陥りました。

そこで,「なんで疑問に感じないのか疑問に思う理由」を自分の中で考えて考えて考え抜きました。そして1つの結論を導き出しました。






そうか。こいつら(選手)は人を疑う心を持っていないんだ。




そう思ったとき,全ての疑問が繋がりました。

そうです。湘南白百合の子ども達は,本当に素直で純粋な子ばかりでした。おそらく,学校の先生もそういう人間に育てようとご尽力され,また,ご家庭でもちゃんとした教育がなされているのです。

他方ぼくは猜疑心の塊のような人間で,そもそも学校できちんとした教育を受けておらず,過去の素行の悪さから自分の息子が弁護士になったことを周囲が信じてくれないと思って自分の息子の職業を秘匿するような両親の元に育ちました。

なんなら軽くぼくの弟が「長男」になっているフシがあります。

よく,「多角的なものの見方が大事」という言葉を聞きますが,それにはまず,ある事実乃至供述がウソなのではないかと疑ってかかる姿勢が必要です。

言い方が悪いというのであるならば,「好奇心を持つ」と言ってもいいです。「本当は何があったのだろうか」という純粋な好奇心を持つことが,多角的な見方に繋がるのです。

「もうダメだ,白百合とか言ってる場合じゃない,黒百合に学校名を変えるべきだ!」

と叫んでいたら,白百合の副校長に聞かれたんですけど,本当にそう思います。

そこで,支援方針を定めました。

そう,選手を徹底的な人間不信に陥らせることを目標としました。

「なんでそいつが本当のことを言っていると思ってんだ!」
「それが本当なら,実際にそいつはどういう行動に出ると思ってるんだ!」
「てめえの頭で考えろ!言われてホイホイやってりゃ済むのは今だけだ!」
「てめえらこれ(教材)を教科書か参考書だと勘違いしてんじゃねえだろうな!?これは裁判なんだぞ!人の人生かかってんだぞ!生身の人間なんだぞ!自分の家族や大切な人が当事者になっていると思ってやれや!」

今,冷静に思い返してみると,基本的に罵倒しかしていない気がしてきました。

ところが,これが契機になったか分かりませんが,基本的にあまり怒られたことのない人生を歩んでいる湘南白百合の選手達,なんかよっぽど悔しかったらしく,闘争心を前面に出してきました。




なんというおれ好みのチーム!



チーム戦において,必要なものは3つあります。

① 闘争心
② 戦術(技術)
③ 自信

チームワークなんて後からついて来るもんだ,まずは闘争心だろうが。

戦術なんて後から考えればいいんだ!まずは闘争心だろうが!


そこから先は楽なもんでした。

異常なスピードで成長を見せる立証準備。

この当たりから,ぼくはあまり口を出すのをやめました。主にiPadでマンガを読んでいました。他の二人の支援弁護士が頑張っていました。



第三章 〜巣立ち〜

本番当日。

もうぼくにやれることはありませんでした。

ぼくのマインドは全て伝承したつもりでしたし,選手が自信を持って作り上げた作品が手元にありました。

相手のある試合なので,何が起こるかは分かりませんが,本当にぼくが心から納得いくチームに仕上がっていたので,実は本番前に既に満足していました。

ココだけの話,本番当日は観に行きたくなかったんです。

選手達は完全にぼくの手を離れていましたし,たぶん見るとドキドキして精神衛生上悪いと思ったからです。

選手はぼくに見て欲しかったかどうかは知りませんが,それはぼくにとってどうでもいいことなので,本当に迷いました。

で,朝起きて散々迷ったあげく,まぁ観に行くかなと思い,遅刻して行きました。

その出来栄えは申し上げるまでもございません。

優勝という結果がすべてをあらわしております。

ただ一点。

東京学芸大付属高等学校の反対質問をした選手。あの選手は現役の弁護士から見ても恐ろしい才能を持っています。

あの選手を見習って欲しいと思います。

あの選手がどれだけ準備をしたか分かりませんが,本番におけるあの対応力。あの尋問スキルはおそらく天然で持っているものでしょう。



というわけで,まぁ何が言いたいかというと,選手が楽しんでやってたみたいで良かった。





(今日の一言)
来年はやらない。絶対に,だ。








にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村