2015年6月5日金曜日

条文読むのが面倒くさいと思っているブログ主が条文を読んでみた。

オヒサシブリデス。渡部デス。


最近国会が紛糾しているらしいじゃないですか。

【産経新聞 「与党参考人が安保法案「違憲」”人選ミス”で異例の事態 野党「痛快」 憲法審査会】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150604-00000538-san-pol

(一部抜粋)

衆院憲法審査会は4日、憲法学の専門家3人を招いて参考人質疑を行った。憲法解釈変更による集団的自衛権の行使を含む新たな安全保障関連法案について、与党が推薦した参考人をはじめ全員が「憲法違反だ」と批判した。

(抜粋終わり)

要するに,現在整備中の安保法制について,国会の人が憲法に詳しい人に聞いてみたら,3人全員「憲法違反だよなにしてんの。」と言っていました。国会の動画も見ましたが,3人全員言い切ってました。

それに対して,内閣の人が,「全く違憲との指摘はあたらない。」と記者会見してました。



ならなぜ呼んだ。



ところで,日本語は大変難しい言語です。一つの言葉が多義的であり,前後の文脈次第によっては意味が全く変わってくるからです。まぁ他の言語もきっとそうなんでしょうけど。

そして,法律(条文)は更に分かりにくい日本語の一つです。法律は大なり小なり強制力を発動するものであり,できるだけ多義的ではなく一義的な読み方にしようと文章をこねくりまわしておりますので,一周回って難解な文章になってしまっていることが稀によくあります。

ところで最近,報道を見ると,「この法律はどーだこーだ」とか,「あの法案はどーたらこーたら」と述べられていますが,ぼくは違和感を覚えています。

誰かが解説している二次,三次情報で満足するのではなく,一次情報を確認する大切さは,最近の偉い人も言及しています。
【平成26年度 教養学部学位記伝達式 式辞・総合情報-総合情報】
http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/about/message/oration/

そこで皆さんには,ぜひ法律関係の報道があった場合には,一次情報である条文を読んでみて欲しいです。結構面白いから。



知ってる。読む気ないの知ってる。



いきなり「読め」と言われて読むほど皆さん暇じゃないことは知っています(こんなブログを読んでくれている時間があるということはさておき。)。

ということで,今日は,一応弁護士であるぼくと一緒に「条文の読み方のコツ」を勉強していきましょう。

これからこの世に無数と言っていいほどある法律の中から,ぼくがランダムに一つの法律を選びますので,ぼくのどうでもいい解説を交えながら,少しずつ見ていきましょう。全部はみてられないので,一部だけ見ることにします。

その法律はこちら!
http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/prioritythemes/diplomacy/127725_01.pdf


【① 法律の名前を見てみよう】

ぼくが選んでおいてなんなんですけど,ぼくはこの法律知りません。

なんだこれ?司法試験に出てないぞ?あ,これまだ法律として施行されていないのか。そうか。解説本もないな,これ。よし,ならある程度解釈を間違えてもなんとでも言い訳ができるな。これで行こう。

ところでこれ,法律の名前長いな。「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法」って,噛まずに言える自信がないな。「民法」とか「刑法」とか短いのがいいな。そういえば「民事訴訟法」は「民訴」って略語があるな。そう,法律名が長いことはしばしばあり,いちいち正式名称言うのがめんどくさいので,略すことがあります。

ところでぼくはニュースとか全然見ないんで,この法案の略語を知らないんですけど,述語と目的語から,ぼくが勝手に略語をつけました。「諸外国の軍隊」を「協力支援」する法律なんで,このブログでは,この法律の略語を「諸外国支援法」とします。

なお,今,ブログ主に「国際平和支援法それw」とチャットをしてきた人がいますが,ぼくはその法律知りません。


【② とりあえず第1条を見てみよう】

これは結構の数の法律がそうなんですが,第1条にその法律の「目的」が書いてあることが多いです。

ところがこの「目的」条文,たいてい長いです。読む気が失せます。そこでコツなんですけど,法律の条文は,「主語」「述語」をまず抜き取り,あと適当に大事そうな「目的語」を選ぶと,たいてい何言っているのかわかります。やってみましょう。

(目的)
第一条 この法律は、国際社会の平和及び安全を脅かす事態であって、その脅威を除去するために国際社会 が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、かつ、我が国が国際社会の一員としてこれに 主体的かつ積極的に寄与する必要があるもの(以下「国際平和共同対処事態」という。)に際し、当該活動を行う諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等を行うことにより、国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的とする。

どうです!読む気が失せるでしょう!(法律家としてあるまじき発言)

これを「主語」「述語」「大事そうな目的語」だけ抜き取ってみます。上記条文の下線部分だけ抜き出します。

(目的)第一条
この法律は,「国際平和共同対処事態」に際し,諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等を行うことにより,国際社会の平和及び安全の確保(する。)

だいぶすっきりしました。

なお,これだと「国際平和共同対処事態」の意味がまるで分かりませんが,上記条文のカッコ書きの前に意味が書かれています。語弊を恐れず意訳すれば,国際社会の平和を脅かされているときに日本が立ち上がらなきゃいけないとき,ということのようです。


【③ 知っていると思う日本語も辞書を引いてみよう】

ところで第一条を読んでて気になったんですけど,「平和」をガン押ししているような気がするんですよ。「安全」と同じくらい「平和」をガン押ししている気がするんですよ。「安全」はなんとなくわかるんですけど,ぼくは「平和ボケしている」と言われることに定評のある日本人らしいので,今一度,「平和」とは何か,ということを調べてみました。

これは通常条文解釈をする際にも行われる作業で,これはあまり知られていませんが,法律家の部屋には,六法と同じく,ほぼ確実に国語辞書が置かれています。そこで,広辞苑(第6版)で「平和」を調べてみました。

①やすらかにやわらぐこと。おだやかで変わりのないこと。
②戦争がなくて世が安穏であること。

なるほど。「平和」という言葉は二義ある言葉のようです。

ただ,この条文は「国際社会の平和」とか,グローバルな使い方をしているので,おそらく②の意味なのでしょう。

そうすると,第一条にある「国際平和共同対処事態」という語の実体も自ずと見えてきます。

「国際的に,世界が戦争がなくて安穏な状態を維持するためにみんなで対処しなきゃいけない事態」ということです。たぶんゴジラが出てきたり,バラモスみたいな悪の帝王が出てきたときのことだと想います。

つまり,誰かが戦いをしかけてきたので,それにみんなで対抗し,国際的に戦争をなくすこと,これがこの法律の目的のようです。

なるほど。なんて高尚な目的の法律なんだ。


【④ 目的を見ただけで安心してはいけない。】

第一条でこの法案の目的を把握して油断したぼくは,第二条の存在に気がつきました。そこには「基本原則」と書いてあり,「目的」とはどうやら別の指針みたいなことが書いてありました。

とりあえず抜き出してみます。

(第一項)
政府は、国際平和共同対処事態に際し、この法律に基づく協力支援活動若しくは捜索救助活動又は 重要影響事態等に際して実施する船舶検査活動に関する法律(平成十二年法律第百四十五号)第二条に規 定する船舶検査活動(国際平和共同対処事態に際して実施するものに限る。第四条第二項第五号において 単に「船舶検査活動」という。)(以下「対応措置」という。)を適切かつ迅速に実施することにより、 国際社会の平和及び安全の確保に資するものとする。

削ります。

(第一項:削り後)
政府は、国際平和共同対処事態に際し、「対応措置」を適切かつ迅速に実施することにより、 国際社会の平和及び安全の確保に資するものとする。

「対応措置」は,大きく分けて「協力支援活動」「捜索救助活動」「船舶検査活動」の3つがあるようです。これだけではよく分かりませんが,読み進めてみます。

(第二項)
対応措置の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。 

!?

すいません,ちょっとブログ主の予想外の条文が出てきました。

諸外国支援法は,国際平和共同対処事態,すなわち誰かが平和を脅かして戦争やらかした際に,国際社会の一員として日本が立ち上がるための法律っぽく読めたんですけど,何故か武力は行使せずに対抗するらしいです。ガンジー的発想なのでしょうか。この時点では対応措置の実態が分かりませんが,まぁ読み進めていれば何かにあたるでしょう。


(第三項)
協力支援活動及び捜索救助活動は、現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し 又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われている現場では実施しないものとする。ただし、第八条第六項の規定により行われる捜索救助活動については、この限りでない。

(第三項:削り&意訳語)
協力支援活動及び捜索救助活動は,現に戦闘行為が行われている現場では実施しないものとする。ただし,もうすでに自衛隊が突っ込んで行っちゃった捜索現場においては,自衛隊部隊の安全が確保される場合は,戦闘行為が行われている現場で実施してもいい。


!?

条文中の「第八条第六項」とは,条文を抜き出すと,「既に遭難者が発見され、自衛隊の部隊等がその救助を開始しているときは、当該部隊等の安全が確保される限り、当該遭難者に係る捜索救助活動を継続することができる。」とあり,「安全が確保される限り」という縛りがあります。そうですね,先ほど対応措置は武力使っちゃいけないとありましたからね。


ところがこの第二条第三項の但書,「第八条第六項の規定により行われる捜索救助活動」=「安全が確保された救助活動」であるならば,現に戦闘が行われている現場での自衛隊活動をOKとしています。


現に戦闘行為が行われている現場で安全が確保されている場合ってどこだろう。


よく分からなかったので,Google先生に「現に戦闘行為が行われている現場で安全が確保されている場合とは」と検索したら,「平和安全法制」というやつがいっぱいヒットしました。このブログとは関係ないと思ったのでそっとページを閉じました。

そうなると俄然気になってくるのは「協力支援活動」と「捜索救助活動」です。この二つは,現に戦闘行為が行われている現場で安全が確保されている異世界において活動が許容されることになります。その活動の中身が俄然気になってきます。

読み進めていったら定義規定が第三条にありました。

(協力支援活動)
諸外国の軍隊等に対する物品及び役務の提供であって、我が国が実施するものをいう。    

なるほど。諸外国の軍隊等に人や物を提供することを言うのですね。

(捜索救助活動)
 諸外国の軍隊等の活動に際して行われた戦闘行為によって遭難した戦闘参加者について、その捜索又は救助を行う活動(救助した者の輸送を含む。)であって、我が国が実施するものをいう。

なるほど。諸外国の軍隊の戦闘行為について避難した戦闘参加者を救う行為なんですね。



これ,ぼくの素朴な感想なんですけど,これどっちも諸外国の軍隊が活動していることを前提にしているんで,どちらも思いっきり戦闘行為が行われている現場にGOするパターンのやつじゃないですかね。


そうなってくると条文同士の整合性がつかなくなります。第三条の本文を読む限り,協力支援活動と捜索救助活動は「戦闘行為が行われていない現場で実施するもの」と「戦闘行為が行われている現場ではあるが第八条第六項で規定する場合に実施するもの」の二つの局面を想定しているように読めるんですけど,協力支援活動と捜索救助活動はそもそも動いている諸外国の軍隊等に対する手助けであり,諸外国の軍隊等が動いている以上,そこは戦闘行為が行われているような気がするのです。

わかんなくなってきた。あれか。たぶん諸外国の軍隊が戦闘を行っていないなんかのときに手助けすんのか。

いやまてそもそも諸外国支援法は,第一条で国際社会の平和が脅かされそうになっている状態を想定していて,その上で諸外国の軍隊が動いているから,軍隊は普通戦闘行為するんじゃないのか?

分かった!諸外国の軍隊は戦闘しないんだ!





(雑感)

毎度のことですが,このブログはオチを考えずに書き始めています。

条文を読んでいたら今までにない疲労感が湧き上がってきたので,ここまでにします。

今回はぼくの読解力の無さを露呈した回になってしまいました。申し訳ございません。

ただ皆さん,ご安心ください。この法案が仮に通ったら,きちんとした逐条解説が出ると想います。

たぶんぼくの理解とは違った,整合性ある逐条解説が出ると思います。

大丈夫です。この法案はしっかりした法案です。





だって総理大臣がそう言ってたから。




(今日の一言)

本記事は,安保法制の合憲性は問題としておりません。

あくまで法律の条文解釈として,こういう解釈はどうだ,と問題提起をしているだけです。

本来,合憲性が担保された上で法案の中身を議論するのが,立憲主義の筋だと思いますが,面白そうなので気が付いたらこんな形でブログ更新してました。すいません。



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